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私の読書感想メモ

佐々木 隆【著】「宮崎アニメ」秘められたメッセージ―『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』まで
ベストセラーズ (2005-02-01出版)

“生きる”ためのファンタジー。
その隠された謎を読み解く。

第1章 宮崎駿の「動く城」―『ハウルの動く城』論(「ハウルの動く城」という題名;魔女と火の悪魔 ほか)
第2章 名前と季節の秘密―『となりのトトロ』論(『となりのトトロ』に描かれている物と時間;自然について ほか)
第3章 ファンタジーの教育―『千と千尋の神隠し』論(神隠しということ;トンネルと境 ほか)
第4章 死と復活の物語―『風の谷のナウシカ』論(物語の推進力;女性原理とナウシカ ほか)
第5章 「生きろ」というメッセージ―『もののけ姫』論(これまでの作品と『もののけ姫』との関係;「自然」対「文明」 ほか)
佐々木隆[ササキタカシ]
1949年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業。同大学院修士課程修了。上智大学大学院博士課程後期満期退学。
東北女子大学教授、担当家政学原論。弘前大学講師、法思想
。「自らの目で作品と向き合うと、宮崎アニメの作品群は、それまで気づかなかった新たなメッセージを発する」と佐々木教授は語る。

 副題が「『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』まで」。この2作品に加え「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」の
計5作品を読み解いた。ハウルの動く城を解説した書籍としては最も早いものという。題名こそ「秘められたメッセージ」としたが、
宮崎監督は人物や画面にメッセージを込めていると指摘する。

 「宮崎アニメは家族の問題を取り扱っていると読めるものが多い。
『もののけ姫』では、遊女が生活のため、たたらを踏む。これは女性の地位の問題と読める。
『ハウル…』は赤の他人が寄せ集まり血のつながりがなくても家族を作れると読める。
『千と千尋…』で食べ方をわきまえない千尋の両親が豚にされたのは、食べることの大事さを訴えていると読める」と話す。

 佐々木教授の宮崎アニメ解読は約20年前の非常勤講師時代に「ナウシカ」に関する小論文をまとめたのが最初。
「人間中心主義という男性原理と、自然と協調するナウシカに代表される女性原理の対立の作品」と解釈するのが主流の中、
怒りにかられ敵を殺すナウシカの中の男性原理などを指摘し「男性原理と女性原理の両立の必要性を訴えた作品」と解釈した。

 「風水で読み解く弘前」(北方新社)などの著述のある佐々木教授にとり5冊目の発刊。
宮崎アニメを取り上げたのは「『千と千尋の神隠し』のことばと謎」(国書刊行会)に次ぎ2冊目。
トトロ」に何度か出てくるカレンダーの日付と曜日の関係が合わないことに注目し、その理由を探る。
「千と千尋」で描かれる月の形の意味を推測するという具合。
登場人物の名前、背景に映る小物、セリフの1つひとつまで、制作者の意図を読み取ろうとする。

制作者はそこまで狙って作ったのだろうかと、素朴に疑問に感じる面もある。
だが、こうして緻密に分析していく中で明確になるメッセージも確かにある。

例えば、「もののけ姫」が人間と自然の対立をテーマとし、人間の環境破壊を戒める内容であることは
だれにも分かる。
だが、著者は多くの人が見過ごしてしまいそうな場面に重要な意味を見出だす。
作品の終盤、「自然」を代表する存在であるシシ神や山犬と、「人間」の代表であるエボシが対峙する場面。
シシ神はエボシが持つ石火矢に芽を吹き出させるが、力ずくで倒そうとはしない。
山犬もエボシの腕を食いちぎるだけで殺すことに失敗したかに見える。

だが、著者はこの場面には「一人のリーダーを殺して一人の人間に対する恨みは晴らせても、
その一人を動かしている社会全体の自然破壊の動きを止められるものではない」という意味が込められていると分析する。

重傷を負い、山犬の背で運ばれたエボシの「山犬に助けられるとは」という言葉は、
「勝ち負けを超えて、山犬と共存しなければ生きていけないことを認めた…
価値観と生き方を変え、自然とともに生きなければならないことを受け入れた」と読む。

こうして、制作者のメッセージを細やかに探ることで、作品がさらに奥行き深く感じられる。
人間と自然の共存に関する著者の見方も非常に示唆に富む。

宮崎アニメは、自然や環境をテーマとする作品が少なくない。
自分では気づかなかった意味や意図を感じさせてくれる本書は、一読の価値がある。
[ポピットの冒険」
「朝は4本足・昼は2本足・夕方は3本足の生き物は何か?」
生まれるとハイハイをし、成長すると立って歩き、年老いて杖をつく=人間」
管理人より
すべて意味があって背景が作られているのだと思う。

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