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私の読書感想メモ

中村きい子著 『女と刀』 1996/05/30,

中村きい子が脳梗塞のため鹿児島市の病院で没。68歳(誕生:昭和3(1928))。
「女と刀」で第7回田村俊子賞を受賞した作家
尊女卑の世にあって、自我を貫いた女性主人公キヲの生涯を、当時の因襲や歴史的背景のなかで描いた傑作。鹿児島在住の主婦が初めて書いた小説ということで話題になったが、その実力は、田村俊子賞受賞が証明してくれた。
舞台は「霧島の連山に囲まれた< 黒葛原(つづらばる) >という、そのころ五十戸にも満 たぬささやかな里で」、キヲは男性社会の矛盾に抵抗し、50年も連れ添った夫を「ひとふりの刀の重さほども値しない男よ」と拒絶する。 薩摩の国の女ならではの壮絶な一代記。
母エイは言った。
殿ごとの空しいかかわりにおいて満たされない思いを、今度は産んだ子に託そうとする。
おのれの胸の中を満たされぬと吹きぬけてきたこのすきま風を払いのけようとした。
じゃがそれも一時の風よけにすぎぬことを気づく。
こどもは旅たつもの。
身も心も残されたとおかれる母親のその孤独は、まえよりもまして深く濃いものである。
女とは、いや母親とはそのように生き、そのように終わらねばならぬ」
この本について

70歳に達した女性が、それまでの生涯を振り返って、自分の連れ合いを、
刀ひとふりの重さもない男と判定して離婚し、その後の日々を一人で生きる。

キヲは、男に変わりたいと思っているわけではなく、
男のように大言壮語したり、大声で他人に号令したいと望んでいるわけではない。
男は淡い。淡すぎる。生の重さを知らない。
女は何代にもわたって、人をうみ、育ててきた。
女の記憶は、男の記憶のように、わずかに何年かにこたえるものではない。
もっと深く過去にさかのぼり、もっと深く未来にわたるものだ。
「このあといくたび生まれ変わろうとも、私が願うのは女じゃ」